何、願ってくれちゃってるんですか

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 二人で歩くこと数分。遂に見えてきた私のアパートの付近は、何やら物々しく、私達は立ち止まり絶句した。 「何……」  アパートの隣にあるマンション周辺に規制線が貼られ、パトカーが止まっている。  周囲には人だかりができており、騒然としていた。 「あそこで夕べ強盗があったのよ」  通りすがりの主婦らしき女性に教えてもらい、思わず「強盗!?」と声を上げた。 「幸いにも大した怪我じゃなかったらしいんだけどね、犯人、まだ捕まってないみたいよ。物騒ねえ」 「そんな……」  昨日、あの公園で犯人と遭遇していたらと思うとゾッとする。  かなり不謹慎だけど、もしかして奇跡的に課長の家で一晩をすごしたのは命拾いだったのかもしれない。 「あなた、この辺の人? 気をつけた方がいいわよ。防犯カメラに映ってたみたいだから、すぐに捕まると思うけどね」 「は、はい……」  まさか近所で強盗事件とは。  まだ犯人が捕まってないということは、またこの辺をうろつく可能性も……。 「……うちで暮らすの決定な」 「え!?」  課長が真剣な顔で言う。 「心配で一人にしておけるか。やっぱりうちに来い」 「でも……」 「……昨日家に連れて帰って正解だったな」  そうため息をつく課長にギョッとする。 「やっぱり私課長の家に!?」  全く記憶がない。記憶がないけど、夕べ課長の家について行ったってこと?  必死になって思い出そうとするけれど、二日酔いの頭痛が疼くだけだった。 「暗い公園で一人で泥酔してたから、ほっとけなかったんだ」 「課長……」  もしかしたら、もしかしなくても、かなり迷惑をかけてしまったみたい。 「……も、申し訳ありませんでした」 「いや、気にするな。……それに、流れ星に願ったのはホントだから」  真っ赤になって目を逸らす課長が可愛らしすぎて絶句する。 「昨日あのまま一人にさせてたらと思うと、ゾッとするよ。星山、やっぱりうちで暮らそう」  確かにここで一人で過ごすのは少し不安だけど、だからと言って本当に課長と暮らすなんて。 「ですが……」  その時、凄まじい勢いで私のお腹の虫の音が響いた。  朝ご飯抜きだったから、もうエネルギー切れそう。 「ほら、荷物まとめて帰るぞ。朝飯作ってやるから」 「朝飯……」  魅惑的な響きについ惑わされそうになる。 「焼き魚定食と、フレンチトーストどっちがいい?」 「あああああ……悩ましい……」 「どっちも作るか」 「どっちも!?」 「早く家帰るぞ」 「はい!」  まさかとは思うけれど、食べものにつられる形で課長に言いくるめられてしまうのだった。    
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