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「眠れる?」
私は、隣で横たわる夫が尋ねる。
「何?私、寝てたんだけど」
トゲトゲしくなる私の口調を気にしないで夫、一太が頭を撫でる。
「起こしちゃった?」
機嫌の悪い私とは違って一太は、微笑している。
「なあに」
ちょっと大人の余裕見せて、目を開けると、一太が天井を指差す。
「見て」
頭上にはキャラクターの姿絵が映し出されていた。
「わあ」
キャラクターはクルクル回り、物語が始まる。
『昔むかしあるところに』
「どうしたの?これ」
私が一太を問い詰めてみる。
「いや、今日記念日だろ。初恋記念日」
「え」
初恋記念日。私と一太が付き合ってから、一年経つ。そういえば、私が初めて会ったのが、去年のこの日。私は、16で、一太は18歳の最後の夏休み。
☆*…
「どうしたんですか?こんな所で」
今、私は猫に見とれていた。
私が見上げると、背の高い目の大きな男の人が立っていた。目は透き通るような青色で、地毛らしい金髪…。
「もしもし」
目の前の好青年がにこやかに笑って手を振って私を現実に引き戻す。
「はい、私、山本美月ていいます」
あ、自己紹介しちゃった。
私は赤面する。
こんな駐輪場の前の道路のど真ん中で。
「ふふ、かわいいね。一太-ブラザー-フッドです。よろしくね」
手を差し出す彼の手を左右の手で握る。
「はい、よろしくお願いします」
☆*…
私は、その台詞を思い出す。
彼は、どうしたのというように私を見ている。
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