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夜、その彼女の元へ、現在の街には少々似つかわしくない女性が一人、訪ねてくる。
「ごめんください」
出てきた彼女は、女性の顔を見て驚いた。
「アイカ?」
「ユズハ、久しぶり」
その女性は親友で、かつて魔王を倒すために旅をしていた時の相棒、"戦友"であった。
アイカを招き入れると、居間のテーブルに向き合って座る。
「ここにいるってよくわかったね?」
魔王を倒した時に別れて以来だから、5年ぶりだった。その間は手紙のやり取りもなかったため、お互いにどこで何をしているのか、その一切が分かっていなかった。
アイカは、街の外で行商人から彼女の消息を知ったこと。住む場所は町の中では教えて貰えなかったと、話した。
「なんか、すれ違う人すれ違う人、みんな怪しい目で見てくるから、怖かったよ」
大袈裟にため息を着くアイカを見て、ユズハは笑った。
街の人がそうする理由を、ユズハは分かっていた。それはアイカが背中に剣を背負っていたからだ。
ユズハと同様に、浅からぬ傷が癒えていない住民はまだまだ多い。ほんのちょっとした要因で、人々の記憶から呼び起こされる。武器はその要因として充分過ぎた。
街も復興が進んでいるとはいえ、まだ当時の傷跡を残している。
だから、武器を持つ女性への目が鋭くなるのも無理はなかったのだ。
しかし、アイカがその理由にピンと来ないことも理解していた。この街以外で、そのような事はなかっただろう。実際、旅をしていた時に、そんなことは無かった。
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