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「で?急にどうしたの?」
そんなアイカが直接訪ねてくるのはただ事ではないと思っていた。自分ならまず、手紙で正しい情報確認する、その手間も惜しいのだろう、とユズハは考えていた。
「あ、そうだった」
アイカはここに来た意味を思い出す。
「確認なんだけど、ユズハって、街の外からの情報とかって誰かから聞いたりしてる?」
「情報?」
唐突で要領を得ない問いだった。しかし、それを聞く理由を、問い返すことはなかった。
立場の偉い人間であれば、様々な手段はあるが、住民レベルだと、ラジオや新聞、各地を巡っている行商人との会話で得られる情報、といったところだった。
「じゃあさ、魔王が復活したかもしれない、って聞いてない?」
不意打ちにしては強烈すぎる一撃に、私は自分の耳を疑う。流石に初めて聞く情報だった。
”あの時”ちゃんと倒したはずだ。2人で消滅したところまで見届けたはずだった。
「いや、まだ噂だし、確かめたわけじゃないんだけどね」
しかし、噂が出ているということは、あながち全くの出鱈目ではないということではないだろうか。
「それを確かめに行こうと思ってる」
突然現れたかつての相棒、魔王が復活したかもしれないという噂。彼女が何を頼みに来たのかは、なんとなく予想できる。
「また、一緒に旅に行けないかな」
ほとんど想像通りだった。私は目をそらして服の裾をぎゅっと握りしめた。
「ちょっとでいいの。復活していないか確かめるだけ」
アイカは顔の前で両の手のひらを合わせる。
ちょっとってどのくらい?
どうやって確かめるの?
そんな質問したら、私は意地が悪いだろうか。
と心の中で自分自身に問いかける。
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