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その時、タイミングが良いのか悪いのか、
『ギギギ…』と奥の扉から鈍い音が聞こえた。
「おかあさん」
「あ」
アイカの表情が変わった。
「どうした?」
音のした方を見ると、娘がタオルケットを握りしめて2階から降りてきていた。
「なんだか怖くて、眠れないの」
一緒に寝てほしいと泣きべそをかいている。
「わかった、ちょっと待っててね」
アサヒに説明しようとすると、娘が先にアサヒに気づいた。
「おねぇちゃん、だぁれ?」
アイカは娘の顔の高さまで屈む。
「私はおかあさんの、お友達だよ」
娘の頭のなでたり、話をしてあやしていると、怯えていた娘も自然と笑顔になった。気がつけば、アサヒの膝の上で眠ってしまった。
「ごめんね」
ぽつりとつぶやくユズハ。
「どうして?」
「子供の話し、してなかったから」
するタイミングなかったじゃん、と笑う。
「こっちこそごめんね」
5年もあれば状況は変わる。第一線から退いていても、家族が増えていても不思議な話ではない。そこまで想像出来ていなかった、とアイカは後悔していた。
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