猫島

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 紘一がいかだ作りをしている間に林田は川に行って仕掛け網を見てくることになった。 「それじゃあ行ってくる。仕掛け網に魚が掛かっていなかったことはないから安心していいよ」 「ええ。お酒があればよかったですね」  二人は笑った。猫がじーっと見ている。  発砲スチロールのいかだは竹と木も使うことにした。発泡スチロールを四つに切り隅に固定してその上に竹を並べる。一番上に木の板をつけて、ビニール製の帆を付けて完成だ。のこぎりはないから漂着していた鉄の板をステンレス製のハサミでギザギザに根気よく切った。  自家製のこぎりができたところで林田が帰って来た。 「大漁だったよ。蛸壺も見てくる。君はいかだを作っていてくれたまえ」  林田はそう言うと猫が顔を洗うように右手で顔をこすった。入道雲ができていた。  蛸壺にも蛸が掛かっていた。これで夕飯は確保できた。本当にご飯とお酒があれば最高だった。  空が怪しくなってきた。灰色の雲が立ち込めている。ゴロゴロと雷の音も聞こえてきた。紘一の頬に雨の雫があたる。 「夕立が来ますね。テントに避難しましょうか?」 「いや、この近くに洞窟とはいかないまでも岩が飛び出たところがある。そこのほうが豪雨には向いている」  林田はそう言うと川魚が入ったバケツと蛸壺をテントの中に入れ紘一に合図を送った。林田が走り出す。紘一は後をついた。
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