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五分ほど走ったところに岩の突き出た場所があった。猫も夕立を察知してか沢山集まっている。空が光り、雷の落ちる音がした。雨が凄い勢いで降りだす。
「間に合ったね。もう少し遅れていたらびしょ濡れだった」
「猫もみんな集まっていますね。何匹ぐらいいるんだろう」
「ここにいるのは、ほんの一部だからね。島全体だと千匹以上はいるだろう」
ということは五百匹は妖怪か。いや、紘一は猫の半分が妖怪だという林田の言葉を本気で信じているわけではないが。
一時間ほどで雨がやんだ。猫がぞろぞろ岩の下から出ていく。
「私たちも行くとしよう。夕飯を作り始めるよ。君はいかだの続きだな」
「もう暗くなりますものね。早く作らないと」
紘一は一週間を目途にこの島から脱出しようと考えていた。いかだには釣り竿と食料と水を積もう。ある程度大きないかだでなくてはいけない。
「そうだ、枝豆があるよ。食べるかい?」
枝豆があるなら醤油も作れたのではないか? いやあれは麹菌がいるし、結構な手間がかかる。林田には無理だろう。紘一だって無理だ。
「枝豆いいですね。今夜は川魚と蛸と枝豆か。豪華だな」
林田は笑顔になった。この人は気持ちのいい人だ。なんとかして二人でこの島から出たい。今日見た島だと確実に人は住んでいるだろう。
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