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テントまで歩いた。草むらが濡れている。デッキシューズを履いていて良かった。
バケツの中には色々な川魚がいる。林田は昨日と同じ要領で火を点け川魚を焼いた。
「君、蛸の刺身は活け造りにするかい?」
「活け造りは食べたことがないですね。是非とも食べてみたいです」
林田はカッターナイフで器用に蛸を捌く。あっという間に夕飯が出来た。紘一はいかだを作るのをやめる。尿意を感じたのでテントの裏の草むらに行った。大きな猫がいた。紘一は嫌な予感がして後づさった。
「ニャー」
大きな猫は一鳴きすると背を向けた。尻尾が三本に分かれていた。猫魈だ。会ってしまった。
紘一は急いで林田のところに戻った。林田は食べずに待っていてくれた。
「林田さん、私も猫魈に会ってしまいました。私も妖怪になってしまうんですかね」
「君も見たかね。どうだ? 爪とぎがしたくなってこないか?」
「言われてみれば。木があったらやってしまうかもしれません」
「私は理性で抑えている。そうか。君もか。猫魈はまだいるかな?」
林田は瞳孔を開いて辺りを見渡した。猫が集まってはいるがさっきの大きな猫魈はいない。
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