猫島

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 火を見ながら考え事をしていると魚が焼きあがった。林田が串に刺した魚を紘一に渡す。 「食べてみてくれ。なかなか美味だよ」  紘一は魚の背中の部分に噛り付いた。白身の魚でなかなか美味しい。刺身でも良かっただろう。 「美味しいですね」 「ジャガイモももうすぐ茹で上がる。塩しか調味料がないのがつらいところだな。ま、そのうち慣れるよ」 「林田さん、私はこの島にずっといるつもりはないんです」  妻もさぞや心配しているだろう。妻も含めてのクルージングでなくて本当に良かった。  ジャガイモが茹で上がった。ほくほくしていて甘みがある。魚とは合わないがこれはこれで美味しい。夢中になって食べていると猫が近くに寄って来た。紘一は魚の頭を放り投げる。 「君、猫に餌をやってはいけないよ。ここは猫が多いからね。猫同士が喧嘩になる。ここの猫はね、干潮のとき岩場で逃げ遅れた魚を捕まえて食べているんだ。もっとも妖怪になると何も食べなくても生きていけるんだがね」  どの猫が生きている猫でどの猫が妖怪か分からない。林田は見分けがつくのだろうか。  魚を一匹とジャガイモを五つ食べた。満腹になった。紘一はお礼を言った。 「林田さん、ありがとうございます」 「なあに。困ったときはお互いさまだ。虫がテントに入らないよう注意して今夜は寝よう。星が出ているから明日は晴れだろう。約束通り海水浴をしようじゃないか」  そのときに林田が家に帰りたいか聞けるのか。普通だったら帰りたいと思うと思うのだが。  テントの中には発泡スチロールが敷いてあった。流れ着いたものだろう。これなら体が痛くない。林田がすぐ近くに寝ているのは気分のいいものではないが仕方がない。
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