猫島

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 お昼はとても美味しかった。少し休んだら岩山に登ろう。紘一は林田に言う。 「岩山はそんなに高くないから一時間もあれば登って帰って来られるでしょう。万が一、天候が崩れたらすぐ帰ってきます」 「今日は入道雲もできていないし大丈夫だと思うが十分気を付けてくれたまえ」  紘一は水を飲んで喉を潤した。  二人で岩山に行く。(ふもと)で林田と別れた。紘一は岩に足をかける。一歩一歩慎重に登った。途中手で岩を掴んで手の力だけで上に登らなければいけない場所があった。紘一は全力をつくした。  頂上に着いた。立ち上がって海を見る。遠くに島があるのが分かった。結構大きいし建物らしきものも見える。紘一が打ち上げられた砂浜の方角だ。  岩山を降りると林田が別れた場所で待っていた。 「島がありましたよ。人も住んでいそうです。いかだを作りましょう。この島から出るんです」 「しっ、猫に聞かれる」  林田は青い顔をして紘一の口をふさいだ。 「猫に聞かれたらまずいんだ。私は妖怪になっているかもしれないからね。裏切り者は殺される」 「それじゃあ、いかだを作るのは私がやります。林田さん、テントの下に敷いている発泡スチロールを使っていいですか?」 「ああ、いいよ。下は草むらだしビニールを敷いておけば体は痛くない。あれは冬用だからね」  紘一は口角をあげて林田の手を握った。
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