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気が付いたら浜辺に寝ていた。浜辺は二百メートルほど続いているだろうか。その向こうは切り立った断崖だ。人の気配はない。紘一は体に付いた砂を払い落した。洋服は天気が良かったせいか乾いている。いや、天気に感謝している場合じゃない。今は八月だ。喉が渇いている。水分を摂らなければ熱中症になるだろう。
紘一は辺りを見渡した。海の反対側、砂浜の向こうは低い崖が続いていて、人家らしいものはまったくない。無人島に打ち上げられたか。ヨット旅行なんてしたのが間違いだった。
とにかく崖に湧き水でもあればいいとふらふらしながら砂浜を歩いた。猫の足跡が続いている。猫がいるということは飲み物と食べ物があるということだ。
崖をいくつか超えると猫が数匹いた。茶トラ、黒猫、三毛猫、種類は様々だ。紘一は一番ふくよかな体をしている茶トラの後を追った。なんとかして水のあるところへ案内してもらいたい。
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