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夏祭り、秋祭り。
祭りのたびに僕は父と姉に連れられて、
神社の境内に行くのが楽しみだった。
勿論、お目当ては境内に並んだ露店。
僕と姉は父からお小遣いをもらうと、
姉は『金魚』すくい、
僕は『ヒヨコ』釣り、
の場所に足を運んだ。
『金魚すくい』と『ヒヨコ釣り』は
いつもほぼお隣同士で並んでいた。
金魚の前とヒヨコの前には
タオルで鉢巻をしたおじちゃんが
威勢よく座っていて、
その後ろには『金魚とヒヨコ』の『天敵』
『猫ちゃん』を追い払う役の若いお兄さんが
数名立っていた。
僕は、おじちゃんから釣り棒と、
ヒヨコを入れるざるをもらい、
目を輝かせながらヒヨコを釣り始める。
この日、僕の才能が開花した。
一羽目 「おっ!坊主!釣れたな」
釣れたのは、オレンジ色のヒヨコ
二羽目 「坊主、また釣れたな」
釣れたのは、青色のヒヨコ
三羽目 「坊主!上手いな」
釣れたのは、紫色のヒヨコ
ざるの中にオレンジ、青、紫の色をした
ヒヨコが入れられ、ピーピーピーと
鳴いている。
僕は嬉しくて後ろを振り返る。
後ろには、小学生の僕が釣り上げる
ヒヨコを見ようとする大人と子供が
僕に熱い視線を送っていた。
「おい!小学生、頑張れよ!」
と知らない大人が僕に話かける。
僕は、ドキドキしながら、再度釣り棒を
ヒヨコの群れの中に垂らした。
ピーピーピー、また釣れた。
周りからは拍手喝采。
四羽目は赤色のヒヨコ。
「……」
今まで、威勢のよかった
目の前のおじちゃんが
急に無口になった。
そして、ついに僕は
五羽目のヒヨコを釣り上げた。
緑色のヒヨコ……。
その時だった、人だかりの後ろの方から、
父が僕を呼ぶ声が聞こえた。
僕は、最前列から父に返事をした。
僕が手に持っているざるに
入れられたヒヨコを見た父は、
僕の顔を見て驚いた。
僕の前に座っていた威勢のいいおじちゃんは、
父の顔を見てホッとしたような顔をしたのを
僕は覚えている。
僕が、ヒヨコ釣りを止めると、周りからは
拍手が起きた。
僕は照れながら、釣り上げた『五羽のヒヨコ』
をもらった。
僕はその夜、
『ヒヨコ釣り』のヒーローになった。
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