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今日も首を探せとか、運べといったおせっかいを焼いてくるのだと思っていたので、その言葉は予想外だったのだ。
同時に佳奈たちが過去を探っていることを理解した。
「そんなの教える義理はねぇよ」
亮一が不機嫌さを隠さずに答える。
智子は少し後ろに下がって4人を睨みつけた。
「工藤に本間に中村に柏木。そして原田じゃないのか?」
明宏が覚えてきた名字を口に出す。
最後の原田だけ、智子へ視線を向けた。
2人は明らかにたじろいだ様子で明宏を見つめる。
その視線は泳いでいた。
「明治45年に首切りを行った5人の名前だ。お前達がイジメられたり、蔑まれてきたのはこの歴史があるからか?」
続けられた質問に智子はカッと頭に血が登っていくのを感じた。
「うるさい!」
叫び声を上げてビールの缶を投げつける。
蓋の開いていたビールの缶は中身を撒き散らしながらアスファルトに落下して、むせるような匂いを充満させた。
「ちょっと調べたからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
亮一が銃口を明宏へ向ける。
明宏は背中に冷や汗が流れるのを感じたけれど、逃げなかった。
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