知らない顔

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涼しい図書館の中に入るとホッと胸をなでおろした。 外の焼けるような真夏の暑さが嘘のようだ。 「まずは郷土資料のコーナーだな」 何度も訪れたことがあるようで、明宏は迷うことなく大きな図書館を歩き出す。 図書館内は吹き抜けの2階建てになっていて、本の数は東日本最大だと言われているらしい。 そんな図書館に夏休み中にやってくる人は多く、そこかしこからさざめきのような話し声が聞こえてきた。 時折聞こえてくる子供の歓声に耳を向けながら明宏へ続いて2階へ上がる。 少し奥まった場所に郷土資料のコーナーがあった。 「こんなにたくさんあるのかよ」 天井まで届きそうな本棚の、上から下までギッシリと郷土資料が詰まっていて大輔がうんざりした声を上げた。 もともと活字はそんなに読まないので、これだけの数の本を見ただけで圧倒されてしまうのだ。 「イケニエについての本なんてタイトルを見てもわからないだろうから、1冊ずつ根気強く確認していくことになると思う」 明宏は手近にあった本を4冊取り出して1冊づつみんなに手渡していった。
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