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「死んだ後って確か、四十九日の間に、行き先を決める試験があるんじゃなかったでしたっけ?」
亡き祖母から聞いたうろ覚えだが、白銀は大きく頷いた。
『よく知ってるね。閻魔大王様に代表される十人の裁判官に、計七回の審判をしてもらうんだけど……』
白銀は、かくっと肩を落とした。
『最近は、審判もマニュアル化が進んでてさあ。現世の流行を取り入れようって。ほら、AIだっけ?』
「ひえ……」
仏道にも浸透しているのか、となつみはあんぐり口を開けた。
『おまけに、死者たちの方も、マニュアル対応が得意な奴ってのがいてさ。上手に面接をくぐり抜けるわけ』
そういえばそんな後輩がいたなあ、となつみは前の職場を振り返った。就職面接はどうにかパスしたらしいが、仕事能力も協調性もさっぱりだった。
『てなわけで、こんなのがって奴が、大きな顔して成仏してるわけ。で、僕にホトハラかましてくるの』
「まー、事情はわからないでもないですけど」
ふう、となつみはため息をついた。
「いつまでもここに隠れてても、解決しないんじゃないですか?」
なつみだって暇ではないのだ。正直、さっさと帰って欲しい。おまけに、夜も更けてきた。いくら人間ではないとはいえ、目の前の白銀は、見た目は若い男性そのものだ。二人(?)きりで過ごす気は、さらさら無い。
『うーん……』
煮え切らない返事をしながら、白銀は着物の袂から、何やら手鏡を取り出した。のぞいた瞬間、げっと声を上げる。
『やばい! ズイちゃんが来てるって! 激怒してるって!』
「ズイちゃん?」
『最近うるさいクレーマー仏だよう。あ、ズイってのは戒名の略ね。ズイ何とか院何とかって言ったけど、長すぎて覚えらんなくて』
確かに戒名は長いが、その呼び方は無いだろう。
『そうだ』
何を思ったのか、白銀はなつみを見てにっこり笑った。
『なっち、対処方法の相談に乗ってくれない? 特技なんでしょ』
「はあ!? 何で私が!?』
なつみは、目を剥いた。
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