土蔵の少女

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「おばーちゃん、来たよー!!」  玄関先で元気いっぱい飛びついてきた弟の翔に、一年ぶりに会った祖母は相好を崩した。 「(しょう)ちゃん、いらっしゃい。(ゆい)ちゃんもよく来たねえ」  祖母にくしゃりとした笑顔を向けられ、唯も思わず抱きつきたくなったが、もう中学生になったので我慢する。かわりにお土産を差し出した。 「お世話になります」  祖母は唯をまじまじと見つめながら受け取り、感心したように息を吐いた。 「すっかりお姉さんになって! 女の子は変わるねえ、見違えるようだわ」  唯はなんだか急に照れくさくなってもじもじと指先をもてあそぶ。  夏休みは母と小学三年生の弟と三人で、祖母の住む田舎に一週間滞在するのが恒例行事だった。  おばあちゃんも、おばあちゃんちも大好き。だけど――。  こっそりと溜息をつく。唯にとっては、憂鬱な一週間の始まりでもあった。
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