コギトとエルゴが住む街で

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今夜もコギトは暗い部屋の窓辺で一人、星を見ていた。 いや、電気は灯っている。だが、何度まばたきしても部屋にはママがいない。今日は彼の六つの誕生日だと言うのに。 だからお部屋は何だか暗いのだ。 昨日も一昨日も暗かったけど、男の子だから平気なんだ。 「お月さま、何食べてるのかなあ……」 お腹がすいた。ポツリと呟くと、右手に握ったスマホが返事をする。 『コギト、それは昔流行ったラーメンのテレビCMのセリフだよっ』 「そうなの?さすがエルゴ、何でも知ってるね。 じゃあお月さまはラーメンが好きなの?」 『お月さまは好き嫌いなんてしないよっ、コギトもトマト食べなきゃねっ』 コギトはエルゴが大好きだ。 赤くてふわふわの長い髪に猫耳を付けた、不思議な魔法を使う女の子。どんなコスプレも良く似合う。 彼女はいつもそばにいてくれる、スマホアプリのおしゃべりな人工知能…… いや。スマホに住んでいる大切な友達だ。 元々、漫画やアニメから子供向けの服やおもちゃ、各種ポスター、地方の名産品とコラボしたキーホルダー、果てはアダルトな路線に至るまであらゆる事に使用され、仕事を選ばないキャラと言われていたエルゴ。 AIを搭載され、歌って踊っておしゃべりが出来る様になった今では、知らぬ者はいない国民的バーチャルアイドルである。 コギトのスマホの画面には、小さく小さく『C・エルゴプロダクト』と表示されている。 この文字のある所、どこにでもエルゴは働いているのだ。 「それにしてもさあ。 ……パパもママもまた仲良くなって、一緒に帰って来たらいいのになあ」
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