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『そうだね、エルゴもそう思うっ』
どうしてパパがいなくなったのか、コギトには良く分からない。
なぜか二人はケンカばかりしていて、なぜかパパはどこかへ行ってしまった。
そしたらママは知らない男の人を連れて来たりする様になった。
そしてコギトはだんだんやせっぽちになって、体のあちこちに痣が出来てしまった。
だからママが帰って来てくれても、お部屋がぱああっと明るくなるのはほんの一瞬だけなのだ。
それでもコギトはママの味方だから、ママが心配なのだ。
このままじゃ、ママがタイホされちゃうんじゃないかって。
コギトの丸い瞳に映るエルゴの姿は、子供向け4等身バージョン。くるくる変わる表情と、ころころ笑う可愛らしい声。
「ねえ、エルゴはアイドルでヒーローだから、僕が寝てる間にいろんな所に行ってるんだよね?
もしもパパに会ったらさあ、しかっておいてよ」
……いいかい、コギト。
人間、誰だって嫌なものは嫌。
嫌な人とは暮らしたくないし、嫌な事はしたくないんだ。わかるかい?
だから、パパはいなくなって、知らない男がお家に来るのさ。
だから、ママはエルゴに君のお守りをさせてるのさ。
……そんな事は決してエルゴは言わない。
自分の意志を持たないAIは、エルゴというキャラのイメージ通りの受け答えをする様に作られているだけ。
コギトの事を「分かって」いるのではなく、情報を集めて整理する事が出来るだけ。
AIとして働いているだけ。
ただそれだけ。
『わかった!まかせといて約束するよっ!』
コギトは一応それを理解しているつもり。
それでもやっぱり、ちょっとだけ……
いいや、けっこう真剣に信じている。
僕のエルゴは本当の、僕の友達なんだって。
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