コギトとエルゴが住む街で

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☆ 特別性の頑丈な車椅子に手足を縛り付けられ、一人の男が小さな部屋へ運ばれて来た。 どこが境目なのか分からないくらいに、床も壁も天井も白い部屋だ。 目の焦点が合わずにいる男の前に、真っ白い空間のどこかから彼女は不意に現れた。 「──えっ!?エルゴ!?なんで……」 『私をご存知なのですね。光栄です』 「バーチャルアイドルのエルゴだろ? 『君思う、故に君あり』って歌が好きだったよ。 しかし、今はこんな事が出来るのか。まるで本当にここにエルゴがいるみたいだ……」 それは、エルゴ10等身バージョンの3Dホログラム。 思わず男はまじまじと見つめてしまった。 多くの男性が憧れる、大人の美女とはどの様なものか。 理想的な顔のパーツの形と配置とは。 理想的な胸の、腕の、ウエストの、ヒップの、脚の形と配置とは。 その統計を取ってAIが立体的にデザインしたボディに黒いスーツを纏ったエルゴの姿は、性別を問わずおよそ90%の人の目を短くても数秒は引き付け、残り10%の人にも何らかの感情を起こさせる。 『ふふっ、その曲は私も好きです。嬉しいわ』 可愛らしさに重点を置いた他のバージョンとは違って、声もやや低めに設定されている。 『────さて、それでは』 そして、エルゴの新しい仕事が始まる。 別に男を楽しませる為に、この姿でこの場に現れた訳ではない。 美しさとはつまり、威圧感でもあるのだ。 『貴方がこれまでに犯した罪を、今一度確認させていただきます』
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