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「な、なんだと!?」
人間、誰だって嫌なものは嫌。
嫌な事はしたくない。嫌な仕事は無くしたい。
機械に、AIに代わりが務まるのなら、任せてしまえばいい。
『──現在、あなたは二度の離婚をしています。
最初の奥様との間にはお子様が一人産まれるはずでしたが、あなたの家庭内暴力により奥様は流産してしまいました』
例えば。
動物はもちろん、虫や草花であっても、傷つけたり命を奪う事に抵抗を覚える人は多い。
相手が人間なら、尚更の事。
『──二人目の奥様との間には、二人のお子様が産まれました。
しかし、あなたと奥様両方からの虐待、そして育児放棄により、お子様は共に衰弱した状態で保護され、施設に預けられましたが後に亡くなっています。あなたは二人の死亡と虐待との因果関係を頑なに認めていません』
罪を犯せば罰を与えられる。それは秩序を守る為に必要なルールだ。
最大の刑罰として、現在執行されているのは死刑だろう。
その是非は一先ず置いておくとして。
『──そして、最近まであなたはある女性と同棲、その間に一人の男の子が産まれています。
にも関わらず、あなたは婚姻届も出生届も役所に提出していません。
更に女性が育児放棄をしている事を知りながら家を出て、現在は違う女性と暮らしています』
ここに大犯罪者がいるとして。
死刑を宣告してくれ、と言われたら。
刑の執行ボタンを渡されたら。
あなたはそれを迷わず告げるだろうか、押せるだろうか。
心が痛む事はないだろうか。悪い夢にうなされたりしないだろうか。
そして人は皆一様に我儘だ。
自分が傷つくのは嫌なくせに、他人を攻撃するのは大好きだ。
重罪人に死刑を宣告すれば、それは酷いあんまりだと騒ぎ。
それ以外の刑を宣告すれば、それは軽すぎる死刑にしろと煩い。
しかも、その殆どは事件に関係のない人々だ。
人間だから間違える事もある。
人間だから感情が先走る事もある。
人間だから、心が病む事もある。
でも。
『──間違いはありませんね?』
AIなら、そんな事は無い。
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