① 思い出の酢豚

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「ずっと、珠子のことを探してた。あの時、二人とも先生になるのが夢で、よく話してたから」 「珠子先生が、本当に先生になれたかが気になって、さまよっていたのか……」  段々と、流れがわかってきた。どうして私がこの幽霊を見れたのかは謎だけど。 「見つけた時、嬉しくて嬉しくて……思わず飛びついたら、珠子に憑依しちゃったみたい」 「なるほど……」  意図的に憑依したわけではないということは、悪い霊ではなさそうだ。まあ、珠子先生の親友らしいし、当然だけど。  っていうか、どうすれば珠子先生は元通りになるのか。  頭を悩ませていた時、素朴な疑問が思いついた。 「あの、どうして酢豚をリクエストしたんですか?」  私の質問を聞いた後、珠子先生は懐かしそうに過去を振り返った。  暗い顔つきだったのが、優しい表情に変わっている。 「よく、学校帰りに中華屋さんで食べてたの。その中華屋さんも、この酢豚と一緒でパイナップルが入ってた。私も珠子もそれが大好きでね」 「ああ……だからパイナップルだけかみしめるように食べてたんですね」  パイナップル入りの酢豚に、懐かしさを感じていた。  その感覚を思い出したかったから、酢豚をリクエストしたのか。  水斗君もよく、パイナップル入りの酢豚を作ったよな。  本人は困惑したまま固まっているけど。  その時、珠子先生の心の声が聞こえた。 『亜咲? 亜咲なの!?』
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