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「ずっと、珠子のことを探してた。あの時、二人とも先生になるのが夢で、よく話してたから」
「珠子先生が、本当に先生になれたかが気になって、さまよっていたのか……」
段々と、流れがわかってきた。どうして私がこの幽霊を見れたのかは謎だけど。
「見つけた時、嬉しくて嬉しくて……思わず飛びついたら、珠子に憑依しちゃったみたい」
「なるほど……」
意図的に憑依したわけではないということは、悪い霊ではなさそうだ。まあ、珠子先生の親友らしいし、当然だけど。
っていうか、どうすれば珠子先生は元通りになるのか。
頭を悩ませていた時、素朴な疑問が思いついた。
「あの、どうして酢豚をリクエストしたんですか?」
私の質問を聞いた後、珠子先生は懐かしそうに過去を振り返った。
暗い顔つきだったのが、優しい表情に変わっている。
「よく、学校帰りに中華屋さんで食べてたの。その中華屋さんも、この酢豚と一緒でパイナップルが入ってた。私も珠子もそれが大好きでね」
「ああ……だからパイナップルだけかみしめるように食べてたんですね」
パイナップル入りの酢豚に、懐かしさを感じていた。
その感覚を思い出したかったから、酢豚をリクエストしたのか。
水斗君もよく、パイナップル入りの酢豚を作ったよな。
本人は困惑したまま固まっているけど。
その時、珠子先生の心の声が聞こえた。
『亜咲? 亜咲なの!?』
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