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変わったことか……この街に来る前の行動を思い返す。
隣に座っている水斗君は、黙って私と珠子先生の話を聞いていた。
「あ、そう言えば……」
転校する前に、一つだけ変わった行動をした。
その後に、変わった夢を見たんだった。
そうだ……思い出せて良かった。珠子先生と、水斗君にも聞こえるようにゆっくりと説明する。
――前の学校で、私は独りぼっちだった。
転勤族だから、どうせ友達を作ってもすぐ別れることになる。だからあえて作らなかった。
寂しさをうめるために、毎日通っていたところがある。
それは学校の近くにある神社だ。
その神社にある水かけ地蔵さんに、毎日学校であったことを話していた。
水かけ地蔵さんは、どんなにクラスメートの悪口を話しても、優しい顔で聞いてくれた。
水かけ地蔵さんだけが、私の心の救いだったんだ。
転校が決まって、最後の学校帰りに、水かけ地蔵さんにお別れを言いに行った。
その時に私は、いつもはしない『お供え』をした。
給食で食べなかったコッペパンとミカンを持って帰ってきて、今まで話を聞いてくれてありがとうの意味も込めてお供えした。
その日の夜、私は変な夢を見た……。
「ヒビコ殿……今日はおいしゅう供え物をありがとう」
昔話に出てくるような、殿様の姿をした男が話しかけていた。若いお兄さんみたいだった。
髪が長くて、テレビで見るようなアイドルの男子みたくカッコ良くて、綺麗な顔をしている。
その綺麗な顔は、悲しそうな表情をしていた。
「ヒビコ殿にお願いがある。少しでも多くの霊を救ってあげてほしいんだ」
「救うって、どうやって?」
「ヒビコ殿の力になってくれる者が、近いうちに必ず現れる。そしたら自ずとわかるだろう……」
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