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そこで目が覚めた。
起きた瞬間、すぐにあの水かけ地蔵さんのことが思い浮かんだ。
最後にもう一度神社に行きたかったけど、引っ越しの日にそんな時間はなかった。
――そして、転校一日目の今日、幽霊が見えるようになったのだ。
「お地蔵さんがきっかけ? 不思議な話ね」
珠子先生は真剣に話を聞いてくれた。水斗君は隣でウトウトしている。
そこまで難しい話はしてないのにな。
「最初は透けた人間だと思いました。まさか幽霊だったなんて」
「ヒビコちゃん、浮遊霊って知ってる?」
「浮遊霊? はじめて聞きました」
「浮遊霊はね、自分の死を受け入れていない、この世にさまよっている霊よ。ヒビコちゃんが見えるのは、それなのかも」
なるほど……浮遊霊っていう幽霊なんだ。私はそれが見えるようになったんだ。
あの水かけ地蔵さんが、私に力を与えた……。
「きっと、そのお地蔵さんの浮遊霊もこの世にいるんじゃない? お地蔵さんも、成仏したがってるんだよ」
「珠子先生、それ本当ですか?」
「だって、夢に出てきた男の人も、悲しそうな表情をしていたんでしょ? きっとその人が、お地蔵さんの浮遊霊だったんだよ」
あの男の人も、成仏したがっているのか。
珠子先生が言っているんだから、間違いないはず。
普段私のくだらない話を聞いてもらっていたんだ。私だって、水かけ地蔵さんを助けたい。
きっと、私にしか助けを求められなかったはずだから……。
でも、どうやって成仏させてあげればいいの?
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