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それが、水かけ地蔵さんの霊の願い。
私はその役目を果たしたい。
大きな声で「はい!」って言いたかったけど……即答できなかった。
「あれ? ヒビコちゃん、どうしたの?」
イスに座りながら、下を見る。珠子先生の顔を見ることができず、うつむいてしまった。
私には、不安要素がある……。
「私、転勤族だから……どうせまた転校しちゃうの。この街で頑張っても、またすぐにリセットされる」
「ヒビコちゃん……」
珠子先生が私のところまで来て、肩に手を置いた。
これまでの辛いこととかを思い出して、自然と涙が出てくる。
せっかくできた友達と離れ離れになって、最初の方は手紙のやり取りをしていたけど、パッタリこなくなったこと。
離れてもずっと友達だからねって言われたけど、転校した後に電話したら「忙しいからまたね」と言って切られたこと。
嫌な思い出がよみがえってきて、辛くなる。
どうせみんな、私のことなんてすぐ忘れるんだ……。
「……関係ないよ」
水斗君が落ち着いた声で言った。
いつの間にかキッチンの前で手を動かしている。何の作業をしているのか。
それより、関係ないって……どういうことなの?
涙目で水斗君を見ていると、つまようじに刺さったパイナップルを差し出してきた。
さっきの酢豚に使ったパイナップルの余りみたいだ。
「転校した後のことなんて、関係ないだろ。オレとヒビコでしかやれないことがあるなら、オレはやりたいぞ」
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