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「ジャガイモ、ニンジン、タマネギ……よし、みんな綺麗に皮むいたな!」
浮遊霊が見えるようになってから一週間。
私はまたしても家庭科室にいた。
でも今は放課後じゃない。四時間目の調理実習の時間だ。
隣のグループのリーダーである水斗君が、自信満々に仕切っている。
今日の課題はカレーライス。
「よし、じゃあ後はオレに任せろ! 速攻で切るからさ!」
タマネギをくし切りに、そしてジャガイモとニンジンは乱切りに、目にも止まらぬ包丁さばきだった。
そのまま熱されている厚手の鍋に入れて炒める。パックに入った角切りの牛肉も入れた。
まさに、水斗君の独壇場だった。
「こら、水斗君! みんなにも作らせてあげてよ! 調理実習の意味ないじゃない!」
たまらず珠子先生が水斗君に注意した。そりゃそうだよ……あれじゃあただの、水斗君の料理披露だもん。
水斗君は焦りながらガスコンロの前から離れる。その表情を見て、隣のキッチンテーブルで突っ立っている私は微笑んだ。
「おい、ヒビコ! 手を動かせよ! どんくさいなぁ」
「あ、ごめんなさい! 今やるからね!」
こちらのグループのリーダーは、小堀 デン太(こぼり でんた)君。みんなからはデン太君と呼ばれている。
いわゆるガキ大将で、体も大きいツンツン頭。
私はデン太君から、きっと嫌われている。
「もういいよ! お前は端の方で見てろ! 俺がやるから!」
デン太君にピーラーをうばわれる。
皮をむく作業もうばわれてしまった。
ああ……やりづらいなぁ。これなら水斗君と同じグループの方が良かった。
輪に交われず、黙って見ていると、一番奥のグループにも私と同じように作業に参加していない女の子を見つけた。
「あの子、確か名前は……菜乃ちゃん? だったっけ?」
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