③ おばあちゃんのだし巻き卵

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「ジャガイモ、ニンジン、タマネギ……よし、みんな綺麗に皮むいたな!」  浮遊霊が見えるようになってから一週間。  私はまたしても家庭科室にいた。  でも今は放課後じゃない。四時間目の調理実習の時間だ。  隣のグループのリーダーである水斗君が、自信満々に仕切っている。  今日の課題はカレーライス。 「よし、じゃあ後はオレに任せろ! 速攻で切るからさ!」  タマネギをくし切りに、そしてジャガイモとニンジンは乱切りに、目にも止まらぬ包丁さばきだった。  そのまま熱されている厚手の鍋に入れて炒める。パックに入った角切りの牛肉も入れた。  まさに、水斗君の独壇場だった。 「こら、水斗君! みんなにも作らせてあげてよ! 調理実習の意味ないじゃない!」  たまらず珠子先生が水斗君に注意した。そりゃそうだよ……あれじゃあただの、水斗君の料理披露だもん。  水斗君は焦りながらガスコンロの前から離れる。その表情を見て、隣のキッチンテーブルで突っ立っている私は微笑んだ。 「おい、ヒビコ! 手を動かせよ! どんくさいなぁ」 「あ、ごめんなさい! 今やるからね!」  こちらのグループのリーダーは、小堀 デン太(こぼり でんた)君。みんなからはデン太君と呼ばれている。  いわゆるガキ大将で、体も大きいツンツン頭。  私はデン太君から、きっと嫌われている。 「もういいよ! お前は端の方で見てろ! 俺がやるから!」  デン太君にピーラーをうばわれる。  皮をむく作業もうばわれてしまった。  ああ……やりづらいなぁ。これなら水斗君と同じグループの方が良かった。  輪に交われず、黙って見ていると、一番奥のグループにも私と同じように作業に参加していない女の子を見つけた。 「あの子、確か名前は……菜乃ちゃん? だったっけ?」
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