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「はぁー、今日は疲れたなぁ」
調理実習が終わってからは、特に誰とも話さないまま帰宅時間になった。
溜息をつきながら、帰り道を歩く。
今日はどっちかというと、気疲れの方が強かった。
チームやグループで何かするのは、本当に苦手だ。
「ヒビコ! 何落ち込んでんだよ!」
「水斗君……」
後ろから水斗君が追いかけてくれた。今日は家庭科室に寄らないみたいだ。
私がクラスの中で唯一話せるのって、水斗君くらいかも。
水斗君の顔を見たら、ちょっと安心した。
「いや……今日デン太君に色々言われちゃって」
「ああ、ちょっと見てたけど、ヒビコ仲間外れにされてるのか?」
「ま、まあ……好かれてはないと思う」
弱々しくそう答えると、水斗君は「はっはっはっ!」と大きい口を開けて笑い出した。
え、何かおかしいこと言った?
「何がおかしいの?」
「だって、そんなの気にすることないだろ! デン太のこと好きなのか?」
「違うよ。でも嫌われるのにも体力を使うというか……」
「そんなの気にすんなよ! ヒビコは何も悪いことしてないんだし!」
前向きな水斗君の言葉に、思わず笑みがこぼれる。
そうだ……そうだよね! クラスの中心であるデン太君から嫌われようが、私は私。
別にどう思われてもいいって考えると、楽になれた。
水斗君に元気が出たと感謝しようとした瞬間、「あっ!」と声をあげた。
「ほら、噂をすれば!」
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