① 思い出の酢豚

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 振り返って、その女の人の背中を確認する。確かに透けて見えている。  何あれ? 透明人間? でも透けているだけで、体自体はぼんやりと見えるけど……。  透けた人間なんてドラマや映画でしか見たことがないし、そんなことって、現実的にあり得るの?  気がつくと、私の足はその透けた人間の方へ向かっていた。 「セーラー服だから……高校生かな?」  黒髪のロングヘアーは、風が吹いても揺れはしない。  背が大きくて、細い体。女子高校生だけど大人っぽい。  私も成長したら、あれくらいスタイルが良くなりたいな……。  のそのそ歩くその背中を見つめながら歩く。  すると、その女の人はさっきまで私がいた学校の中に入っていった。 「あ、戻ってきちゃった……あの人、この学校に何か用があるのかな」  ほとんどの生徒が帰っている。玄関には誰もいないし、廊下もうるさくない。  透けた人間は相変わらず周りを見渡しながら徘徊している。  中靴に履き替えた私は、二階に上がった透けた人間について行った。  透けた人間は裸足だった。足音もしない。  ただでさえ静かな廊下なのに、私の足音だけが小さく響いている。  バレないように、そーっと歩く。二階の一番奥の教室の前で、透けた人間の足が止まった。 「あれ? あの教室だけ、扉が開いている……」  透けた人間が中をじーっと見ている。その教室だけ電気がついていたみたいだ。  近づくにつれて、話し声も聞こえてきた。男の子の声と、先生の声?  私も透けた人間に気づかれないように、教室に近づく。 「水斗君! 勝手に家庭科室を使うなって、何回言ったらわかるの!?」 「げっ! 珠子先生!?」
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