71人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
振り返って、その女の人の背中を確認する。確かに透けて見えている。
何あれ? 透明人間? でも透けているだけで、体自体はぼんやりと見えるけど……。
透けた人間なんてドラマや映画でしか見たことがないし、そんなことって、現実的にあり得るの?
気がつくと、私の足はその透けた人間の方へ向かっていた。
「セーラー服だから……高校生かな?」
黒髪のロングヘアーは、風が吹いても揺れはしない。
背が大きくて、細い体。女子高校生だけど大人っぽい。
私も成長したら、あれくらいスタイルが良くなりたいな……。
のそのそ歩くその背中を見つめながら歩く。
すると、その女の人はさっきまで私がいた学校の中に入っていった。
「あ、戻ってきちゃった……あの人、この学校に何か用があるのかな」
ほとんどの生徒が帰っている。玄関には誰もいないし、廊下もうるさくない。
透けた人間は相変わらず周りを見渡しながら徘徊している。
中靴に履き替えた私は、二階に上がった透けた人間について行った。
透けた人間は裸足だった。足音もしない。
ただでさえ静かな廊下なのに、私の足音だけが小さく響いている。
バレないように、そーっと歩く。二階の一番奥の教室の前で、透けた人間の足が止まった。
「あれ? あの教室だけ、扉が開いている……」
透けた人間が中をじーっと見ている。その教室だけ電気がついていたみたいだ。
近づくにつれて、話し声も聞こえてきた。男の子の声と、先生の声?
私も透けた人間に気づかれないように、教室に近づく。
「水斗君! 勝手に家庭科室を使うなって、何回言ったらわかるの!?」
「げっ! 珠子先生!?」
最初のコメントを投稿しよう!