⑧ 最強タッグ解散?

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 これからたくさんの除霊ご飯を作って、たくさんの浮遊霊を成仏させてあげるつもりだったのに……。  それが終わってしまうなんて。  水斗君の笑顔をうばうことになるのが、つらい。 「違うよ……ヒビコ」 「え?」 「除霊ご飯なんかどうでもいいよ……」 「ど、どうでもいい?」  水斗君が顔を上げて、私を見る。  水斗君の目には光るものがあった。 「除霊ご飯とかそういうのじゃない! ヒビコと別れるのが悲しいんだ!」  水斗君はそう言って、教室を出て行った。  大きい声が教室に響いて、シーンとなる。  朝の教室にはまだ、半分くらいしか生徒が来ていなかったけど、みんなが私の方を見ていた。  水斗君が、あんなこと言うなんて……。 「ヒビコさん、大丈夫?」 「菜乃ちゃん……」 「ちょっと聞こえちゃった。ヒビコさん、転校しちゃうの?」 「……うん、そうなんだ」  菜乃ちゃんは私の手をにぎってくれた。  菜乃ちゃんの手、すごくやわらかい。  そしてすごく、温かい。 「水斗、よっぽどショックだったのね。ヒビコさんのこと、気に入ってたから」 「水斗君の除霊ご飯、もう作れなくなっちゃうしね」 「いいや、ヒビコさんがいなくなるのが悲しいのよ。それは私も一緒だよ」  ……転校が決まると、仲が良かった友達はみんなそう言ってくれる。  でもすぐに忘れられてきた。  みんな口だけだって……どうせ忘れられるって、もうわかってる。  わかってるけど、菜乃ちゃんの今の言葉は、嘘じゃない気がしてきた。 「菜乃ちゃん……私、転校したくないや……」
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