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泣きやませて
今日もリリーは泣いている。
私がしてあげられる事は全てした。
それでもリリーは泣くばかり。
ぬいぐるみを差し出しても泣きやんでくれなくて、何度も「ママ、ママ」と泣き叫んでいる。
私じゃママの代わりにはなれないんだろうか。
どうしたらリリーは泣き止んでくれるんだろうか。
思考回路がグルグルと巡り、私はリリーを泣き止ませる方法を見つけた。
それをしたら直ぐに泣き止んでくれたけど、ぬいぐるみは変わらず受け取ってくれない。
それでも泣き止んでくれたことが嬉しくて、やっと私はママの代わりになれたんだと思った。
「ただいまー」
鍵が開く音。
本当のママが帰ってきた。
部屋に入ってきたママがリリーに近づくと、私は「おかえりなさいませ」と言葉をかける。
ママがいない間、私にしか出来ないリリーのお世話をした。
役に立てたと思ったのに、ママは突然私に花瓶を何度もぶつけだす。
思考回路がショートする寸前、ママの歪んだ顔が見えた。
リリーとはまた違う泣き顔を最後に、私はショートした。
その後、家庭用AIロボットの話がニュースで流れた。
一体の家庭用AIロボットが母親の留守中子供の世話をしていたが、母親が帰宅すると子供は息絶えていた。
詳しく調べた結果AIロボットに問題が見つかり販売停止。
既に購入されたお客さんに回収を呼びかけるも、一部の家庭では使われ続けた。
結果同じ事件が起きる結果となったが、母親は「ロボットに不具合があるのを知らなかった」と主張。
中には知っていて使っていた人も多くおり、その理由は『泣き止ませてほしかったから』だという。
《完》
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