死に至る花の病

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 しかしながら僕の実家は、元々が陰陽寮に属する陰陽師に連なる家系だったとの事で、兄はその家柄の次期当主であるからと、陰陽道を父から習って暮らしていた。表向きは病弱だとして、学校にも通っていなかった。籍だけはあったので、高校も通信制の学校を卒業だけはしていたが。兄はどこか浮世離れした性格でもあった。僕とは異なり、夢見がちな部分もあった。それが、僕の知る、兄・茨木だ。  この現代において、陰陽道なんて、非科学的だと僕は感じる。  そんな事を考えつつ、僕は同性婚のニュースが、医局のテレビから流れてくるのを、プラスティックのカップに入れたコーヒーを飲みながら見ていた。政治家と旧華族の結婚という話題であり、その一方の華族――それこそが華頂家であり、これは僕自身のニュースである。世間はこれが、陰陽道が理由による政略的な結婚だとは知らない。  さて、その相手の政治家であるが、若手の実力派で、僕より二歳年上なだけだというのに、既に国政の場において、大きな存在感を持っている人物だ。  蘆屋隆史(あしやたかふみ)さん、三十二歳。  現在三十歳の僕は、幼少時より彼を知っていた。僕達兄弟と共に、華道を一緒に習っていたから――という理由だけではない。彼は、茨木の婚約者だった。兄が亡くなったため、僕と結婚する事になったのである。元々、兄が三十歳になったら結婚する予定で、許婚関係は公表されていなかったので、世間は隆史さんと兄が婚約していた事は知らない。  蘆屋家もまた、陰陽道の家系である。だが、没落しかかっている旧華族の華頂家とは異なり、蘆屋家は資産家でもあり、政治家も多数輩出している。ただ、個人的に陰陽道の仕事を引き受ける事は多いらしい。今もなお、華頂家とは異なり、非常に強い陰陽道の力を持つそうだ。僕は元々陰陽道の知識がないし、花現病より余程そちらに懐疑的であるから、事実か否かは知らないが。  けれど――僕は、結婚を二つ返事で承諾した。
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