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◇ ◇ ◇
「今までずっと、誰と付き合っても続かなかったな。『理想を押し付けるな』『私は人形じゃない』ってさあ」
暴力を振るうわけでも、無茶な要求をするわけでもない。それどころか、望めば何でも叶えてやりたいと思っていた。
それなのに何故? ただ愛したいだけなのに。
AIならそんな面倒もない。
しかしAIには温かい身体がなかった。ただ理久の愛し方をそのまま受け入れてくれる、血の通う肉体という容器を持つ恋人が欲しかった。ずっとそれだけ追い続けていた。
ベッドの横、疲れてシーツに包まる恵を上体を起こした姿勢で見下ろす。
理久はやっと手に入れたのだ。
ロボットに仕込んだ誘導に簡単に乗る、自我のない都合のいい、ただ可愛らしい女。何よりも誰よりも大切にする。
「自己主張する女なんていらないんだよ。俺が大事に可愛がるから、黙ってニコニコしてたらそれでいい。君みたいにね」
──深い眠りの中にいる恵には、優しい恋人の独り言は届かない。
~END~
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