ROBOT

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「そういえば恵ちゃん、あれ使った?」 「え、あの……、なんでしょうか」  食事の席で理久に訊かれ、恵は意味が読めずに問い返したが彼は呆れた様子も見せずに言葉を続けた。 「この間渡しただろ? あのロボはAI搭載で、何でも質問に答えてくれるんだ。有名なサイトもあるけど、あれは俺のオリジナル。結構自信作だから使ってもらえると嬉しいんだけどなあ。で、意見聞かせてよ。まだまだ改良するからさ」 「エーアイ。理久さん、そういうの作れるなんてすごいですね。あの、帰ったら試してみます。使い方、わからなかったのですみません」  恐縮する恵にも、彼は変わらず優しかった。 「何も難しいことないよ。土台のスイッチ入れて、質問するだけ。普通に話し掛けて大丈夫だから。ああ、できるだけはっきりとね」 「機械、がそれで答えてくれるんですか? なんだか、……私には全然、その。すみません、私──」  話について行けない自分を恥じながら口籠る恵にも、理久は僅かな苛立ちさえ表すことはない。穏やかで冷静な人。 「恵ちゃんはそれでいいんだよ。女の子はそれくらいが可愛い。最近はあんまりいないんだよね、そういう子」 「は、い。あ、そう、ですか」  何を言われたか咄嗟に理解できなかったが、「可愛い」というのだから褒められているのは間違いない。  小さな頃から恵は、ずっと「可愛い」とは言われていた。 「じゃあね、気をつけて帰りなよ。……是非、ロボ使ってみてね」  使う路線が違うのに、わざわざ恵の利用する駅まで送ってくれた理久が念を押すように付け加える。 「はい、帰ったら試します。今日はどうもありがとうございました」  恵は彼に頭を下げ、一人で改札を通り抜けた。
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