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「まあ可愛いんだけどね、話通じなくてさぁ。……やっぱ顔だけで選んじゃダメだな」
学生時代に交際を申し込まれて承諾した初めての「恋人」が、友人に愚痴を零している背後を通り掛かってしまったことがあった。
どうやら上手く話すこともできない恵にすぐに興味を失ったらしい。
聞かれていたことに気づかなかったらしい彼にどう対応しようかと悩むまでもなく、次に顔を合わせたときに別れを告げられたのだ。
それ以来、恵は男性からの告白には身構えてしまう。
この男もどうせすぐに飽きるに違いない。また同じことを繰り返すなら最初から始めない方がいい。
そう予防線を張ってしまっていた。
だから理久に「付き合って欲しい」と言われてもはぐらかした。はっきり断ることも怖くてできなかったからだ。
それでも何度も誘って来ては御馳走してくれる彼は、本当に優しい人なのかもしれない。
「あ、えっと。……理久さんて、どうして私を誘うんですか?」
ベッドの上に正座して、AIロボットに話し掛けてみる。
傍から見たらおかしいのではないか? と思いつつも、理久に使うと返してしまった以上約束は守らなければ。
ピピピ……、キュイ……
【オコタエシマス】
【ソレハアナタガカワイクテステキダカラデス】
【アナタトスゴスジカンガタノシイカラデス】
思ったより滑らかな「口調」。もちろん人間とまったく区別がつかないほどではないが、意味もすぐに掴める。何よりも、機械が嘘を吐くはずもない。
つまりこれは、真実?
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