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理久が恵を「素敵だ」と、「一緒にいて楽しい」と感じてくれているのだろうか。
もうすでに何度も会って、弾まない会話も気の利かない恵の姿も彼は見て知っている。それでも──。
「あ、……」
何かが心の、身体の奥底から湧き上がってきたようだ。
常に嫌われないように、なんとか場の一員として目溢ししてもらえるように、それだけを考えて日々を送っていた。
恵は頼まれたら断れない。
あの「合コン」もそうだ。明らかに「メンバーが足りなくて急遽数合わせで誘われた」ことくらい承知していても、不興を買いたくなくて参加する以外に選択肢などなかった。
小中学校ではともかく、それ以降は今の職場まで含めて苛められたこともあからさまに仲間外れにされたこともない。
こんな自分にも普通に接してくれる周囲に感謝して、出来る限り恵の方からも合わせたかった。
その結果理久に、……何一つ誇れるようなこともない恵を気に入ってくれる人に会えたのなら。
もう少しだけ様子を見て、彼に応えてもいいのかもしれない。
もしまだ理久が、恵と付き合いたいと考えているとしたら。気が変わっていないのならば。
少しだけ前向きな気分で、恵はそのままベッドに横になり照明を消した。
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