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「何でも訊いたら答えてくれるよ」
食事を終えて、帰り際に理久に渡された箱の中身は小さな手作りロボットだという。
職場の先輩に連れられて行った飲み会で知り合った彼は、そのあとも途切れず恵に連絡を寄越す。
見様見真似で「そうするものらしい」と場の雰囲気に従い交換した、メッセージアプリのIDに。
企業の研究所で人工知能の研究をしており、趣味でもプログラムを組んでいる、らしいが、説明されても恵には理解できなかった。
ただ、理屈はともかく彼はすごい。何でも出来る、尊敬の対象だ。自分でも頭がいいとは思ったこともない恵とは釣り合わない。
今年三十だという理久は、恵より七歳も年上で共通の話題もそうそうなかった。ただ、たとえ同年代だとしても対等に向き合える気はしない。
なぜ彼は、会話もろくに成り立たない恵を誘うのだろう。
「ありがとうございます」
礼を言って受け取り、恵は理久と別れて帰宅した。
一人暮らしの1Kマンションには、余分な家具などはない。
迷った挙句、恵は結局箱から出した贈り物の置き場をベッドのヘッドボードに決めた。
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