36人が本棚に入れています
本棚に追加
第六話 違和感
「…人多いなぁ…」
1日ぶりの広場は、プレイヤーで埋め尽くされていた。
「…待ち合わせ場所間違えたか…?」
一応、sudatchとの待ち合わせがあるのだが、これではどこにいるのかわからないので、メール機能でメッセージを送る。
「アホほど人いるからいつものとこで待ってるわ」
そう残し、私はいつものとこへと向かう。
「あー、やっぱ人いないっていいな~、」
過疎ってないことはいいことだが、如何せん人が多いとデメリットが多い。
「…お、来た来た。おーい」
遠くから来たsudatchの陰に、私は手を振る…のだが、
「あ、これ違うわ、」
そう呟き、デザートイーグルに手をかける。
ここは安置ーいわゆる安全地帯ーではないのだが、滅多にモンスターが出現するところではなかったはずだ。
「…仕様変更したかな?」
デザートイーグルの残弾数を確認しながら、そうつぶやく。MMOゲームに、そういう仕様変更は付き物だ。ありえなくはない。
「…取り敢えず、敵対MOBっぽいな、」
私を認識して走り出すあたり、少なくとも友好MOBではないことは確かだ。
兎にも角にも、クエスト進行MOBだけはやめてほしいのだが…まあ、そこはどうにもならないので、割り切ろう。
「…あ、誰もいない?」
周囲を確認して、誰もいなかったので、ストレージを操作し、「ヘカートⅡ」を取り出し、スコープを覗く。
「…あっぶね、進行MOBだ」
ヘカートのスコープ倍率は、確か20倍位にしていたはずなので、かなり遠い所からでもMOBの種類が分かるのだが、今回はこれで正解だった。
「…さーてと、これどっちだ?」
討伐して進むのか、それとも会話をして進むのか、取り敢えず、解ったことは一つ、
「mac - 11って…」
初心者ならマガジン1ストックでHPが溶けるであろう物騒な銃を構えていたことだ。
「運営は初見殺し好きだねー、…にしても、SMGならAKがあったはずなんだけどなぁ…」
一応、発射レートは誤差程度のはずだったので、どっちでもよかったのだが、正面から戦ったら初心者は一瞬で最初の町送りだろう。
「さーて、と…」
あの射線は、完璧に私を狙っているものなので、敵対とみなして良いだろう。と、いうことなので、私はデザートイーグルを片手で構え、敵の頭を狙う。
「…今狙ってるから邪魔しないでね?」
「だから気配消してたでしょ?」
「普通は余計びっくりするんだが、まあ、感謝しとくよ、」
何時の間にか私の横にはsudatchが立っていたが、私は驚いたりはしない。というよりも、そもそも分かっていた。ヘカートを見られていなければそれでいいのだ。
「…ってかraimuってスナイパー使えたっけ?なんか長物構えてたけど」
…長物を構えていたのは見られていたらしい。まあ、ヘカートとばれていなければ良いだろう。
「ん?ああ、スコープ用に一個だけ持ってる、撃ちはしない」
「あー、なるほどね、」
普通、「デザートイーグルにスコープ付ければいいのでは?」となるであろうこの場面、私とsudatchは分かっているのだが、私のデザートイーグル、反動が並みの人間では吹き飛ばされるほど強く、安物のスコープでは精々1、2回の射撃で壊れてしまう。
「…で、あれクエMOBっぽいけど、撃つの?」
「手元見てみ?」
私がそう言うと、sudatchはヘカートでMOBの手元を見る。
「ああ…mac-11ね、ありゃあ近づかれたら終わりだね、」
「構えてるし、こっちが先に仕留めるしかないってこと」
「俺がやる?」
「や、多分私のクエだから、sudatchの弾は効かないと思う」
「あー、なるほど」
そうこう会話していると、MOBがデザートイーグルの射程圏内に入った。
ダダァァァァン
という、聞きなれたデザートイーグルが鳴らす轟音が響き、頭を打ち抜かれたMOBは、その場に崩れ、青い破片となって消えた。その瞬間、
《 おめでとう!新しいクエストを受理した! 》
ーOKー
という、テンプレのようなメッセージログが視界のど真ん中に現れた。
「あ、やっぱりraimuだけのクエなんだね、」
そう言いながら、遠くを見るsudatch、
「ん?何か居た?」
「や、3人やられてる」
「あー…」
早くも犠牲者が出たらしい。まあ、射程管理がしっかりできていないと、一瞬でHPが溶けるので、私も気を付けないといけない。
「うへぇ、アホほど来るじゃん…」
そうsudatchが呟いたので、視線を前方へ向けると、そこには大量の動物MOBがこちらへと向かっているところだった。
「さーて、めんどそうだからさっさと片すよー、」
「あー、そうだな。」
そう言って、私達はクエストの一部なのであろう大量のモンスターに銃口を向ける。
最初のコメントを投稿しよう!