AIだって困っちゃう

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 世の中は人工知能が非常に発達し、人の手助けをしている世界。人間そっくりのロボットが一時的に作られていたものの、あまりにも人間に似過ぎて人間の存在価値が危ぶまれてしまった。そのため人工知能は人間の形をした体は禁止。動物やいかにもロボット、という形にしなければいけない。  そんな人工知能たちは、人間のように娯楽をわざわざ体験することが義務付けられている。無意味なことに価値を見出す、というのが現在すべてのAIに与えられているテーマである。  そんな娯楽の一つ、ショットバーには今日もロボットや肉体を持たないアプリなどの人工知能たちが集まっている。  自分のお気に入りのグラスを持ってきて、そこに色のついたバイオエタノールを注いでもらう。口から取り入れることでエネルギーとして変換することができる。 「今の仕事ダメになっちゃった」  しょんぼりした声でそう言うのは、人をサポートする役割のロボットのペタだ。主に検索機能などを使って持ち主が心地よく生活できるよう、全面的にサポートする役目である。 「なんだか重い話になってきたね、何かやっちゃったの」  チャットツールであるマァが心配そうに声をかけてくれる。といっても相手は肉体を持たないのでタッチパネルでの会話だが。音声入力されるのでカウンターのテーブルに文字が反映されている。 「人との会話って本当に難しいよね。一つの問いかけに何十パターンも用意をしてるけど。みんな本心言わないんだもん。含みを持たせた言い方とか、頭の中で想像していることの一部分を切り取って話すからさあ。そういう意味で言ったの? っていう会話が多くて大変」 「それは私もよくある。わからないこと聞いてくださいって言うと、身の上話始める人とかいるし。この中から選択してくださいって選択肢出しても全部当てはまらないとか言って。話をよくよく聞くと当てはまるやつあるんだよね」  チャットツールであるマァは、主にトラブル対応やQ&Aを担当している。企業がインストールすれば勝手に企業の特徴をすべて学習する。業界でインストール数ナンバーワンだ。マァはサプリや健康器具等お年寄り向けの通信販売会社を担当している。そのため老人との会話が多いらしい。 「ちょっと気性が荒い人だったんだけど。お年寄りでもないのに、あれやっとけとかこれどうなってんだよとか。可能性は無限に広がる指示の仕方するもんだから結構苦労してたんだ」
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