呪いの村

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 実家へ帰省するため、真司は飛行機に乗っていた。  窓から景色を眺めていると、真下にある山の中に、村らしきものが目に入った。          □□□        □ □        □□□        □□□□  □     □  □   □□□□□□  □  □□□□□□□  □  □     □□□□  □  飛行機で何度も通過している場所だが、こんな場所に村があった記憶はない。  しかも、家屋の配置が独特だ。  今まで気がつかないはずがない。  ふと、真司は最近、話題になっている『呪いの村』の噂を思い出した。  世界各地には『禁足地』というものが点在している。  日本でも、長崎県のオソロシドコロのように厳格な畏れの地や、奈良県の三輪山、金峰山の五丈岩のように、神聖な場所。  千葉県の八幡の藪知らず、山梨県の富士の樹海のように、「入ったら出てこられない」といわれている怪談要素の強いところといった、様々な禁足地が存在している。  そして、オカルトマニアの中で、今、一番熱いスポットは『名もなき呪いの村』だ。 『その村の名前を言ってはいけない。その村に入ってはいけない。破れば呪われる』という噂なだけに、誰もその村の名前を知らない。  当然、なんの手掛かりもない。  けれど、その村について調査をしていたオカルト動画配信者や、オカルト有名ブロアーが相次いで行方不明になっているのだ。 「もしかして……ここなんじゃ……」  まさかという気持ちが頭を過る。  真司はゾクリとしたものを感じた。 「いや、でも……大丈夫だよな。だって俺、この村の名前、知らないし──」  小さく首を左右に振った途端、機体がぐらりと傾いた。  嫌な予感がする。  けれど、機内は落ち着いた様子で、乗員も緊急事態を告げていない。  通路を挟んで隣の席に座るカップルは、楽し気に写真を撮ってはしゃいでいるほどリラックスしている。  ホッと息を吐いた直後、大きな爆発音と同時に、真司は真っ赤な炎に包まれた。 了
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