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「私に合わせなくていいから」
「でも二人で歩幅とかリズムを合わせないと……」
「そんなの分かってる。だから君が私に合わせるんじゃなくて、私が君に合わせる」
出会いとも呼べない、単なる接点だった。
体育祭の種目の一つ、二人三脚での障害物走。くじ引きで僕らはペアで出場することになった。
「でも……」
「運動神経が全然違うのは分かる。でも、そうする」
二人三脚は二人の運動神経が違う場合、どうしても下に合わせることになる。そうしないとうまく進めないから。
「なんでそこまで?それなりで……」
「足を引っ張ってる私が言うことじゃないけど、それじゃダメなの」
「……」
「それなりになんて、ただ周りに流されるだけの生き方なんて私は嫌なの」
なんてことのないただのワンシーン。
すぐに過ぎ去っていくはずだったのに、それは始まりとともに、終わりの合図だった。
「絶対に勝つと、自分たちの思い通りになると思ってる、そんな人たちに石を投げ込んでやるのが好きなの」
「……変わった趣向してるね」
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