揺れる草舟

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*** 「私に合わせなくていいから」 「でも二人で歩幅とかリズムを合わせないと……」 「そんなの分かってる。だから君が私に合わせるんじゃなくて、私が君に合わせる」  出会いとも呼べない、単なる接点だった。  体育祭の種目の一つ、二人三脚での障害物走。くじ引きで僕らはペアで出場することになった。 「でも……」 「運動神経が全然違うのは分かる。でも、そうする」  二人三脚は二人の運動神経が違う場合、どうしても下に合わせることになる。そうしないとうまく進めないから。 「なんでそこまで?それなりで……」 「足を引っ張ってる私が言うことじゃないけど、それじゃダメなの」 「……」 「それなりになんて、ただ周りに流されるだけの生き方なんて私は嫌なの」  なんてことのないただのワンシーン。  すぐに過ぎ去っていくはずだったのに、それは始まりとともに、終わりの合図だった。 「絶対に勝つと、自分たちの思い通りになると思ってる、そんな人たちに石を投げ込んでやるのが好きなの」 「……変わった趣向してるね」
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