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開かずの部屋
「いい式だったね、圭君」
「うん、今日はお疲れ様」
エレベーターの扉が開く。深夜、僕と愛莉はマンションに帰ってきた。
今日は僕達の結婚式。二次会の浮かれ気分がまだ残っている。
「ただいまー」
愛莉がドアを開ける。彼女のマンションに僕が引っ越してきて数日。続けて「ただいま」と言いながら、ついつい顔がゆるんでしまう。
幸せな1日だったな。
愛莉はとびきり可愛かったし、CGの桜の花びらが会場に舞って、皆喜んでくれた。
そして何より素敵なのは、これからも同じ家に帰れること。そう、2人きりのラブラブな生活は始まったばかりなんだ。
僕はソファに腰かけ、今日までの道のりを思い出す。アプリで出会った愛莉は、可愛い見た目にそぐわず年上らしく僕を引っ張ってくれて、すっかり心を奪われた。「この人のためなら、なんでもしてあげたい」と思った最愛の人とこの春、結婚。
ああ、幸せだなぁ。
「圭君、大丈夫? 疲れた?」
バスルームから愛莉が戻ってきた。すぐ僕のこと心配してくれるところも優しくて好きだな、と思いつつ「大丈夫だよ」と返す。
そのとき、ふとドアが目についた。
リビング横、まだ一度も入ったことのない部屋。「片付いてないから入らないで」と言われて、それきりになってたけど。
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