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衝撃
ミナトが立っている。その向こうに、愛莉がいる。ミナトは少し腰をかがめて、愛莉の肩を抱き、顔をのぞきこんで……。
それはまるで、キスしているようで。
やがて2人は離れる。愛莉の目元が少し赤く、照れたような笑みを浮かべてミナトを見上げた。
僕の頭は真っ白になった。
なんだ、やっぱり恋愛関係じゃないか――。
足元がぐらつく。鞄が落ちる。
「圭君」
愛莉が僕に気づく。ミナトも振り返る。
僕は2人の視線に耐えきれず、逃げ出した。
「圭君!」
後ろで玄関のドアがバタン! と閉まった。
「はぁ……はぁ」
逃げるように走って、走り疲れて、立ち止まる。
すぐ横の幹線道路を車が行き交っている。
行くところもないのに何やってるんだろ、僕。
さっきの映像がフラッシュバックする。
愛莉のことがわからない。ミナトが好きなら、どうして僕と結婚したんだろう。
幸せになれると思っていたのに、アンドロイドに全部負けて、裏切られて。こんなみじめな思いをして。
受け入れようと、思ったのにな。
ぼうっとしてた僕は、こっちに向かってくるそれに気づくのが遅れた。
異音が聞こえたときにはもう、それはそばの植え込みをなぎ倒し、突っ込んできていた。目に映るものがスローモーションになり、迫ってくるものが大きな鉄の固まりだと気づく。
大型の宅配ロボ。
以前見た暴走のニュースが頭をよぎる。
次の瞬間、衝撃を受けて僕は歩道に転がった。
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