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後悔
「ご、ごぶじですか、だんな……さま」
目を開ける。
すぐそこにミナトの顔があった。
「ミナト? なんで……」
体を起こす。僕の背中にまわされていた腕がだらん、と落ちる。
「え」
ミナトは半壊していた。服は破れ、全身がボロボロ。あちこちからコードや機械の破片がのぞいている。
あたりに目をやって、僕は惨状に気づいた。
数メートル先で、宅配ロボが横転している。土ぼこりが上がる中、人や警官ロボが集まってくる。
「どこもけがは……ないようです、ね」
ミナトの声が途中で裏返る。
「間に合って、よかったです」
いつものミナトの笑顔が固まり、動かなくなった。目の前が真っ暗になる。
「ミナト……ミナト!?」
揺さぶっても返事はない。
「圭君! ミナト!」
はぁはぁ、と息を荒らげながら愛莉が走ってきた。
「大丈夫? 怪我は?」
「僕は大丈夫、だけどミナトが僕をかばって……本当にごめん!」
痛々しいミナトの顔に、僕の涙が落ちる。
愛莉は落ち着いてミナトの様子を見ている。申し訳なさが募る。
「……うん、大丈夫だよ、圭君」
「あんな冷たい態度取るんじゃなかった、いくら気に入らなかったからって」
「だから、大丈夫だってば」
「僕は君のことが誰より好きで、だったら自信をなくすんじゃなくて、君の好きなミナトを僕ももっと大事にすべきだった!
いくらキスしてたからって、尽くしてくれたミナトをこんな目に合わせて……って、え?」
頭にようやく愛莉の言葉が届いた。
大丈夫? 誰が?
まじまじと愛莉を見ると彼女は頷いた。
「大丈夫よ。
ネット上に彼のバックアップがあるの。ちゃんと直るわ」
それから、ミナトごと僕を抱きしめた。
「キスしたって思ったの?
バカね、あれは私が疲れてめまいがしたのを支えてくれただけよ」
救助ロボが近づいてきた。
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