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帰宅
1週間後、僕は定時ダッシュで帰宅した。
「ただいま!」
ここ最近返事はなかった。だけど今日は違う。
「お帰りなさいませ、旦那様」
ミナトが久々に出迎えてくれた。
「もう大丈夫なの?」
「ええ、愛莉さんの手厚い保証のおかげです。さらに人間らしくバージョンアップもしてきました」
すっかり平気な顔をしている分、僕の心は痛む。
「ありがとう、助けてくれて……痛かったよね?」
「大丈夫です。
それより旦那様をお守りできてよかった。
私がいない間は問題なかったですか?」
「うん。愛莉ともたくさん話したよ」
あのあと僕が正直に胸の内を話すと「ごめんね」と愛莉は言ってくれた。
「私、ミナトがいれば楽だからってそればっかりで、そんなに不安にさせてるなんて思わなくて……もっと早く、ミナトのこと言って信じてもらえばよかった。圭君の気持ちも聞くべきだった」
「いいよ、僕こそごめん。
僕らこれから、もっと互いに気持ちを寄り添って、本当の意味で家族になろう」
「うん。圭君、愛してる」
そして愛莉は、とびっきりの笑顔を見せてくれた。
「なんだか、変な感じだ」
ふふっと笑った僕に、ミナトは首をかしげる。
「僕は君のこと、愛莉みたいに家電って思えなくて……そのくせ君の完璧さに勝手に落ち込んで。
君に焼きもち妬いて、冷たくした。ごめん」
「お気になさらないで下さい」
ミナトの瞳に僕が映っている。
プログラムされた完璧な優しさ。彼に心はないかもしれないけど、彼に親愛の情を持つのはそう間違いではない気がした。
「ちなみに1つ提案があるんだ」
「なんでしょう?」
「今度一緒に、愛莉のためにご飯を作ろう」
ミナトは固まり、ややあって「喜んで」と返事してくれた。
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