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2ヶ月後
季節は変わって、夏。
『本当にごめん!』
買い出しから戻ると、ぐしゃぐしゃに泣く僕の顔がスクリーンに映し出されていた。
「あ、こらまたそんなもの見て……やめろって!」
「お帰りなさい旦那様」
『ミナトを僕ももっと大事にすべきだった!』
「消してよ!」
顔を真っ赤にして僕は抗議する。
「嫌です。その命令には従いません」
「こんの……自分勝手AIめ、強制削除してやろうか」
「動画は俺の『お気に入り』に登録されています。なにしろこの動画を見ると俺の充電の持ちが良くて」
「嘘つけ変わんないだろ。くそ……変なところを人間らしくバージョンアップしやがって」
「AIの進化と言ってください」
ギャーギャー言いながら追いかけ回していると、リビングのドアが開いた。「ただいまー」と言った愛莉が目を丸くする。
「なんか前より仲良くなったね?」
兄弟みたい、と言いながら彼女はソファに座りスマホを開く。
「新婚旅行の早割り航空券、さっき発売開始したんだ。窓際は2シートしかないからここでいいかな」
僕は追いかけるのをやめた。
「ミナトはどうするの。荷物用貨物室じゃかわいそうじゃん。
こっちの席は?」
視界の端で、ミナトが微笑んだ気がした。
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