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出会い
「えっ、どちら様……」
そう言いながら、目が離せない。
まるでおとぎ話の王子様のよう。色白の肌に、ウェーブがかった金髪、同色の長いまつ毛。
まじまじと見ていて、耳がとがっているのに気づいた。ネットで見たことがある。これは――。
「このアンドロイドは、春風ミナト。……綺麗でしょう?」
「うん」と僕は反射的に頷き、我に返った。
「え、どういうこと? もしかしてこれ、ずっと愛莉と一緒にいたの?」
「そうよ。すごく助かってるの。
――ミナト、起きて」
彼は目を覚ました。青緑色の目が僕をとらえる。起き上がり、僕達の前に立った。
身長がすらりと高く、白いシャツに紺のスラックスが似合っている。
「おはようございます、愛莉さん」
深みのあるいい声で、彼は微笑む。
「おはよう。こちら、話していた私の旦那様。圭君だよ」
「かしこまりました。
圭君、とお呼びしても?」
「うーん、そうねぇ、『旦那様』でいいかも」
「登録しました。
旦那様、はじめまして。ミナトです」
人間ではない、と聞いてもなお人間のように見える、表情も声も自然なミナト。
なんだか頭が痛くなってきた。
「待って待って、僕この状況に追いついてないんだけど、もしかしなくても、彼も一緒に暮らすの?」
「ダメ……かな?」
愛莉は上目遣いでお願いモードに入った。すごく可愛い。だけど。
ミナトを見て、また愛莉を見る。
「いくら機械でも、こんなかっこいいのが愛莉のそばにいるのはちょっと……」
「不安? 嫌?」
「うーん、申し訳ないけど、実家に置くとかできないかな? 僕達、新婚だよ?」
焼きもちだと白状したくはなかった。
「わかった、しょうがないよね」と言ってくれるのを期待したけど。
「それは嫌」
きっぱりと言われた。
「ええ?」
「彼、本当に便利なの。
それに、もったいないし。100万したのよ」
「ひゃく……!?」
「圭君と出会う前に、もう一生独身かなーって思って、勢いで買っちゃったの」
愛莉の口調が、だんだん早くなる。
「でも家事全般やってくれるんだよ。大丈夫、そのうち慣れるって。この綺麗さだから、美術品みたく思えばいいんじゃないかな。それにね、私も圭君が嫌がるかな、って思ったけど、一度入手するとアンドロイド条例の関係で廃棄するにはいろいろと手続きが難しくて、家に置いておいた方がよくて、つまり何が言いたいかっていうと……」
ぱん! と両手を合わせて、僕の奥さんは拝むようにした。
「ごめん、ほんっとにごめん!
ごめんだけど、捨てられないので、一緒に暮らしてください!」
「ええー!?」
騒ぐ二人を前にして、美形のアンドロイドはにっこり笑った。
「よろしくお願いいたします、旦那様」
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