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「どうしたの?」
「あー、実はね……」
言いづらそうな愛莉に目をやり、ミナトが続く言葉を引き取った。
「旦那様、大変申し上げにくいのですが、愛莉さんは本日同僚の方々とランチ会がございます」
「ミナト、しっ!」
犬に言うみたいにたしなめる愛莉。
「そう……なの?
え、僕聞いてないけど、なんでミナトは知ってるの」
「ごめんね、まさかお弁当作ってくれると思わなくて……あとスケジュールはミナトと共有してるんだ」
困った顔で愛莉は頭をかく。
「知らなかった」と言うのが精一杯だった。
ミナトは知ってるのに僕には一言もないなんて。
そりゃ、サプライズしようとした僕が悪いんだろうけど。そんな風に2人並んで、はたから見るとそっちが新婚さんみたいで……なんだろう、この疎外感。
顔が次第に赤くなっていくのがわかる。
沈黙を破って、ミナトがキッチンへと向かった。
「俺、お片付けします」
「いい! 君の手は借りない!」
「じゃ、じゃあ私そのお弁当、晩ごはんにもらおっかな」
「気を遣わないで!」
僕は猛スピードでキッチンを片付け、着替えてお弁当と鞄をつかんで半泣きで家を飛び出し……そのままの勢いで出勤したのだった。
話を聞き終えた先輩は「こみ上げる笑いを抑えきれない」といった顔でニヤニヤしている。
「えー、じゃあアンドロイドに負けちゃったんだ?」
「負けてませんっ!」
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