ミナトとの時間

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ミナトとの時間

「お帰りなさいませ、旦那様」 「……うん」  ミナトの前をすり抜け、寝室に入った僕はベッドに寝転がる。  キッチンから、夕食を作っている物音がする。  床にはゴミ一つないし、シーツはシワひとつなくいい香りがする。ホテルみたいに気持ちのいい空間だ。  僕だってこれくらいできる。だけど毎日完璧に、と言われたら無理だ。アンドロイドは疲れを知らない。「今日は気分じゃないからやめとこう」と考えることもない。  コンコン、とノックの音がした。 「夕食ができました。温かいうちにどうぞ」 「愛莉は?」 「残業なので、先に召し上がっていてほしいそうです」 「……」 「今夜はカレーですよ」  今朝のことも、さっきの冷たい対応も気にすることない、優しい声色。  「いらない」とも言えずドアを開けると、微笑むミナトの姿があった。席についてカレーを食べる。  おいしい。悔しい。 「お前は食べないの」 「俺の動力源は電気ですので。後ほど充電いたします」 「アンドロイドだもんな」 「ええ」  意地悪な言葉も受け流される。圧倒的に「正しい」存在。カレーもおいしくて手が止まらない。  ミナトはキッチンの片づけを始めた。  しばらく静かだったけど、ふと、目があった。 「旦那様」 「なに?」 「今朝の件ですが、俺と張り合わなくていいんですよ。  家のことは全て任せてください。それが仕事ですから」 「そう言われても……正直、お前とは付き合いづらいよ」  思わず口から出てしまった。
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