おつかい

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おつかい

 少女はアニーと名乗った。デリバリーのハンバーガーとポテトをぱくついている。俺はぐったりと床に座り込んでいた。涼しい室内は天国のようだ。1杯の水と引き換えに、アニーは俺から情報をごっそり引き出した。ついでに「トドみたい」と言われた気もする。 「……それでMFIの社員証を偽造してほしい、と」 「はい」 「お母さん、推しのライブツアーに行ってるよ」 「おし?」 「戻るのは来週だよ」 「なんてこった」  約束は金曜日だ。間に合わない。 「あたし、協力してもいいけど」 「本当か?」  俺の目は、さぞキラキラしていたことだろう。パンクなアニーが天使に見えてきた。 「ママから教わってるから。でも一つ条件がある」 「なんだい?」  昔もあったな、こんなこと。  協力と引き換えに予定外の仕事が出てくるのだ。何をねだられることやら。ジュリアの娘なら金塊か、宝石か。 「あたしね、キディちゃんのぬいぐるみが欲しいの」 「ぬ、ぬいぐるみ?」
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