おつかい

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 聞けば、キディという猫のレアなぬいぐるみが水曜日に日本で限定発売されるという。 「現地で買わずにオークションでいいじゃないか」 「そんなのダメだよ、転売じゃん」  身分証の偽造はいいのか。  そう思ったが、口には出さないことにした。 「ママから一人で飛行機はダメって言われて諦めてたんだよね。おじさん日本で買ってきてよ。  その間に社員証作っとくから。潜入のバックアップもするよ、どう?」  迷ったが、今から他の協力者を探すのも難しい。 「わかった、やるよ」  俺達は固い握手を交わした。 「おじさん、連絡先ある?」 「あっスマホ取られてたんだった」  そして俺は配達に戻った。とほほ。    火曜日までタダ働きした後、俺はなんとかスマホとカードを返してもらえた。  ナタリーに頼み込んで、航空券、現金(暴食しないよう最低限)を手に入れ、俺は日本にたどり着いた。格安のホテルを選ぶ。体がきつい。横になるなり泥のように眠った。  早朝、シブヤのキディショップ前に俺は並んだ。  昔なら街を歩くだけで抜群のスタイルと顔でどこの国の美女も俺に見とれたものだったが。 「なにあのおじさん、汗すごいんだけど」  日本は想像を絶する蒸し暑さだった。この汗と一緒に脂肪が流れ出てくれたらいいのに。  開店後、俺は無事にぬいぐるみをゲットした。が、意外と高かった。タクシー代もなく鉄道と徒歩で乗り切る。  昔はスマートに任務をこなしていたのに、なんだろうこの落差は。  やはり薬が必要だ。  深夜、時差ボケに頭を痛めながら俺はアニーの元へと戻った。
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