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『美的感覚は個人差がある為,お答えできません』
返事をする鏡に言ってみたい言葉No. 1(予想)に冷静な声が返ってきた。AIの声はカタコトなロボ声ではなく、ナチュラルなナレーションのようだった。
別に『白雪姫です』なんて答えは期待していなかったが、寂しさが胸を通り過ぎた。
「ま、そんなものか」
『美しい顔ランキングや世界の美女ランキングの結果をお答えすることもできますが、世界中の人物を比較し、投票したものではありません。正確な答えは申し上げられません』
「うん、ありがとう」
私は興味を失って、近くにあるダンボールに手をかけた。が、AIの声は続く。
『一般的に左右対称な顔が美しいとされています』
「はーい」
『また好意を持つ人物の顔に必要以上の魅力を感じる場合もございます。人によれば恋人こそが一番美しく、魅力的だと思われる方もいらっしゃいます』
「はいはい」
一つの質問への答えが長い。ただ尋ねたのは私なので、適当に返事をしていた。次、何かを問いかける際は気をつけなくてはならない。
『これらの点から分析いたしますと、ご主人様のお顔は世界一美しいとは判断できません』
「は?」
どういうこと?一瞬言葉が理解できず、鏡を振り返った。ノーメイク&部屋着でダンボールを漁る自分が映っている。目の下にはクマがあった。
『ご期待に添えず申し訳ありません』
「何にも期待してないですけど?」
失言気味な鏡との新生活が始まった。
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